2023年2月14日火曜日

声の力

  気がつくと早2月になってしまいました。遠くトルコ地震のニュースに2011年の3月を重ねてしまいます。一日も早く、一人でも多くの人が助けられることを願ってやみません。

ポーラ・ミーハン選詩集 思潮社

昨年11月26日 青山ブックセンター「ヨーロッパ文芸フェスティバル・アイルランド編 「ポーラ・ミーハン選詩集」での翻訳者朗読から 詩の冒頭を集めてみました。

私は、この小道を知っている 目でなく魔法の力で・・・
 Well 「泉」 山田久美子訳

母さんが わたしに6ペンス硬貨を渡しながら言った・・・ 
 Buying Winkles「巻貝を買いに」河口和子訳

ブライダル・ヴェール滝へと 男は向かっていった・・・
 The Man who was Marked by Winter「冬の刻印を受けた男」 大野光子訳

まずはーー戦う用意を整えて・・・
 The Wounded Child「傷ついたこども」河合利恵訳

っていうのは 上の階の騒音が天井をがたがた揺らして・・
 Thunder in the House「雷が家でなっているよ」栩木伸明訳

 冒頭だけでもその詩の情景だけでなくその時の雰囲気も思い出されます。朗読の
力でしょうか。ポーラ・ミーハンさん自身の朗読、こちらは英語。意味より気分が
伝わってきました。またリズミカルな跳ねるような英語と空気の流れのようにつつみこむような日本語の雰囲気の違いも面白く印象に残りました。

 12月まだ年末の喧騒前の浅草大黒家倶楽部では、

なごみの語り 
  

   弥生半ばの花の雲 鐘は上野か浅草の
 利生は深き宮戸川 誓いの網のいにしえや
 三社の氏子中 もれぬ誓いや網の目に・・・
         (清元 三社祭 詞章)



   



 詩は、アイルランド詩人の詩を翻訳者たちが朗読したもの,  唄や物語の朗読は、何のつながりもありませんがふと思い出すのです。声が耳の奥に残っているのですね。ニュースからトルコ地震で被災している人たちの声が聞こえてくるように。NHKニュースではときどきAIによる音声放送を流しています。最初に「AIによる音声でお伝えします」と説明が入らなければ「抑揚のない人だなあ」というくらいでアナウサーの声に聞こえることがあります。いつのまにかAIのこの声も浸透してしまうのかもしれませんが、AIは果たして悲しい、沈んでいるときに思い出せる希望の言葉を発せられるようになるのでしょうか? 

 よく読みこまれた朗読の声、詩人の声、よく練られた翻訳と翻訳者の声は、言葉の上になにかを乗せて伝えてくれます。聞き手は、その言葉だけでなく、情景や気分を受け取り創造力を発揮して楽しみます。言葉は、情景や気分と一緒に記憶の底に収まります。トルコの言葉は、意味がわからないけれど映像から悲痛な叫びが私の記憶からひっぱりだされてきます。命をかけた言葉を乗せた声の力は、世界に共感の輪を広げてゆくでしょう。トルコ地震の災害ニュースは、年末の朗読を聞く機会とリンクして意味や論理に縛られない言葉を乗せた声に力があることを改めて感じさせてくれていました。

 孫美(孫一のいとこ)生後3ヶ月になりました。音のする方に顔を向けられるようになりお父さん、お母さんの声に「うむうむ・・ ぶちゅぶちゅ・・むにゅむにゅ・・」と口を動かしている動画が送られ、おばあちゃんは、きゃっきゃと喜んで思わず顔がほころんでいます。孫美は、身近な両親の話声から何かを聞き取っているように思えます。わかってもわからなくてもいっぱいお話ししてあげたくなります。がヨーロッパの空の下空襲警報や被弾の大きな音、泣き叫ぶ人たちの声が大きく聞こえる中で子供たちは何を聞き取っているのだろうかと思うと悲しくなってしまいます。孫美たちが育ってゆく社会や世界では、言葉や声の力は、どう伝わってゆくのでしょう。意味や論理に縛られない優しい、人をいたわり。楽しませる声にのった言葉は、生き残っていけるでしょうか。身近な人が発する言葉が子供たちの気持ちを育てることを思うと大人こそしっかりしなければなりませんね。

梅 ほころぶ



watashi

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